オリジナルブランドを作る
流行りの人気商品も、似たような商品がたくさん販売されている状況では、ほかと同じやり方では売れません。「他商品との違いは何か」、差別化を明確に打ち出すことで消費者の購買意欲を喚起することができるのです。
品種改良が進み、次々と新しい品種が生まれている「イチゴ」の世界も同様です。牧之原市の「イチゴイチエ石神農園」さんは、静岡でもっとも多く栽培されている「紅ほっぺ」を栽培する生産者。代表の石神誠さんの相談内容は、粒が一律でなかったり傷ができたりして市場に出荷できないイチゴの活用方法についてでした。
しかし、私は県内生産イチゴの8割を超える品種である紅ほっぺをつくっている農家さんが、どんな販売方法をとっているか、そこに何かヒントが隠されている気がして聞いてみました。すると、8割を農協に卸し、2割が直販であり、直販の中には、県を代表する百貨店、松坂屋での取り扱いがあるという。しかも、「イチゴイチエ石神農園の紅ほっぺ」と生産者名を出して販売されているとのことでした。これは、プロのバイヤーが認めたという証です。これは大きなセールスポイントになる。
そう予測した私は、石神さんの紅ほっぺにしかない強みを明確化し、より価値の高いオリジナルブランドとして売り出すことを提案しました。
オリジナリティのあるネーミングとは
- 小出センター長(左)に相談する石神代表(右)
ブランディングには、魅力的なネーミングとイメージ戦略が欠かせません。すでにヒットしているイチゴブランドにはどんなものがあるか、データベースを使って調べました。するも味の特徴や土地柄をうまく表現した名前がヒットしていることがわかりました。また、どれも農協や行政主導で開発しており、生産者個人のブランド商品は見当たりません。
石神農園のオリジナリティを明確に打ち出すネーミングで必ずや成功する。そう確信したのです。
牧之原発のブランドイチゴ誕生
- 完成したロゴ
商品の特性を際立たせるため、石神さんの紅ほっぺの特徴をヒアリングする中で、ポイントを2点絞りました。
第一に「甘みも酸味も色味も“濃い”」ということ。第二に、サーフィンのメッカである静波海岸のすぐそばで栽培しているということ。何度かのやりとりの後、完成した名前は、「恋い味、紅ほっぺ。静波レッド」。サーフボードをあしらったしゃれたロゴ
その結果、東京上野の松坂屋など首都圏からの引き合いもあり、数ヶ月で売上げ5倍アップ。当初の課題だった冷凍イチゴの出荷量も爆発的に伸び、相談を受けた2011年は年間200キロだったものが、2014年には20倍の4000キロの見込みとのこと。ブランディング力の勝利といえます。
イチゴ農家のこだわりを全国へ発信
イチゴの販路を何とか広げられないかと小出さんに相談したところ、「売れる商品を作るためにはまず、ブランディングが必要だ」とアドバイスされました。
「静波レッド」は、しっかりとした果肉と甘みと酸味の程よいバランスが特徴です。その生産者のこだわり、コンセプトをネーミングとロゴマークで表現してもらい、効果的にPRしたことで、かなりの反響がありました。今は次の目標に向かってやる気を増しています。
イチゴイチエ石神農園 石神誠代表