多様化するニーズに応えるには?
我々は無意識のうちに商品やサービスに対して、先入観を抱きがちです。そして時にそれが、商品開発をするうえでチャンスを逃すことにもつながります。
たとえば、急須で入れて飲むお茶の茶葉(リーフ茶)などはその典型といえるでしょう。手前に茶畑、遠くに富士山の写真があしらわれているのがよくありがちなリーフ茶のパッケージです。しかしいまはあらゆるマーケットにおいてニーズが多様化し、すべての層に支持される商品を提供するのが難しい時代。ペットボトル飲料の普及や消費者のライフスタイルの変化により売上が落ち込んでいるリーフ茶を買ってもらうためには、ターゲットを見極め、ニーズに的確にマッチした商品づくりが欠かせません。
若者にウケる「茶」とは
- 音楽をイメージしてブレンドされた商品
そうした考えのもと、新商品開発のお手伝いをしたのが、富士市・マツムラ製茶の「朝霧ロック茶」です。これは、ハードロックからカントリーまで様々なジャンルのミュージシャンが富士山のふもとの朝霧高原に集い開催される巨大野外音楽フェスティバル「朝霧JAM」で、首都圏を中心にやってくる1万人以上の音楽ファン向けに販売する“コンセプト茶”として開発したものです。
朝霧JAMが開催される初秋の頃、朝霧高原は朝晩大変冷え込み寒いほどですが、そんな場所にキャンプをしてまで音楽を楽しみにくる根っからの音楽ファンに「買いたい」と思ってもらうには、彼らの視点に合わせた、先入観にとらわれない斬新なネーミングやパッケージが必要です。そうして完成したのが、朝霧ロック茶「叫」、朝霧ヘビメタ茶「狂」、朝霧J-POP茶「新」、朝霧カントリー茶「朴」の4アイテム。これらを会場で販売したところ、前年比3倍の売上げを実現したのです。
先入観にとらわれない商品開発
このときも、新聞記事データベースは大いに活用しました。まず、ターゲットを明確に絞ったリーフ茶の前例はあるかどうかを調べたところ、ほぼありませんでした。ならば、「今までにない斬新なアイデア」ということで話題性にもなるし、競合商品のない「強み」があります。私はこの段階で、「いける!」と判断したのです。
- 小出センター長(中央)にアドバイスを受ける
松村代表(右)
「先入観を捨てる」ということは、簡単そうでいて実際には難しいもの。既成概念や先入観にとらわれないためのトレーニングとしてお勧めなのが、自分の業界と似た業界のトレンドをチェックすることです。
ツールにデータベースを使います。たとえば飲食の中でもイタリアンやフレンチの世界にいるなら、寿司や日本料理、居酒屋の業界動向を調べるといいでしょう。今、何が人気か、どんな傾向があるのかを見ていくうちに、ヒントとなる気づきに出会えるはずです。
斬新なデザインで売上アップ
茶の単価が下降傾向をたどり、経営に勢いがなくなってきた中、小出センター長にアドバイスを求めました。若者が集まる音楽イベントでどうやったら緑茶が売れるのか、お土産として買ってもらえるのか、という難題に対し、この商品の販売は若者の目を引き、話題にもなりました。また、試行錯誤して作ったブレンド茶の中には予想以上に味の良い商品も生まれました。新たな取り組みにチャレンジする大切さを改めて気づかせてくれ、大変感謝しています。
マツムラ製茶 松村充博代表