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ホーム>防災新時代>第7回 首長の防災意識 〜沼津市編〜

第7回 首長の防災意識  〜沼津市編〜

2015年7月静岡新聞掲載広告から転載

沼津市・栗原裕康市長に聞く

東日本大震災では、復興期間10年間で復興事業費は合計32兆円程度と見込まれ、これまで26兆円程度を使っている。元々財政状況が良くなかった地域であるため、平成28年度以降の被災自治体の一定の負担も容易ではない。
このような地方と国の関係について沼津市の栗原市長に伺った。「一言で言うと、国からの補助金等は積極的に要望しないともらうことができない。口を開けて待っていれば国や県が何とかしてくれるということはとても期待できない。とにかく繰り返し繰り返し要望する。そういう状況だから陳情などという一般の人にはなじみのない言葉がまかりとおる。」
これを踏まえ「今の制度や仕組みの問題をどのように改善するとより良くなるのか?」という私の質問に対しては、明確な答えが得られなかった。難しい質問ではあるが、少なくとも沼津市の将来ビジョンと現状の財政状況等を踏まえ、具体的な回答を示してほしかった。

発災時の対応と想像力

  • 栗原裕康沼津市長へのインタビューの様子

これは県が発表している被害想定(静岡県第4次地震被害想定)に対する回答にも関係する。本当にその被害が起きた時にどのような対応が求められるのかとの質問に対し「第4次地震被害想定はあるけれど、実際にどうなるか想像できない。最悪の場合13,000人が津波の犠牲になる。だからこそ事前の準備をすることで減災に努めたい。」と回答された。
緊急対応から復旧段階では、災害対策本部長となる栗原市長としては、具体的に想像すべきである。沼津市役所は浸水想定地域に近いため(図1)、職員の参集、情報収集、物資の搬送など多くの面で困難な対応になることは容易に想像できる。発災時の状況を想像し、どのような対応を取るのかを思考し、全体像を把握しながら指揮命令ができるように訓練してほしい。
復興段階では、財政状況が益々厳しくなるわが国では、東日本大震災のように手厚い支援が国から得られることは考えられない。
栗原市長には「人、もの、金」を引き付けるビジョンを語り、沼津市をさらに魅力ある地域として育成してほしい。

災害と貧困

栗原市長に災害と貧困との関係を伺った。「それはもの凄い大きなテーマだ。正直言ってとても手が回らない。」という。日本には公営住宅があり、低所得者向けに住宅の供給制度があるが、ここにも防災の観点から大きな課題がある。沼津市の市営住宅は全て耐震化されているが、一方で民間アパートなどは全て耐震化されているとは言えないため、地震による被害のリスクは民間アパートの方が高い。しかも、国交省によると全国の約217万戸ある公営住宅の3割以上が築40年以上を経過しており、建て替え費用などは国が45%を補助してくれる。
つまり、所得が低い公営住宅に住む世帯は、防災上も財政上の支援により、地震に強い建物に住めるようになっている。一方で、民間アパートに住む所得が高い世帯の方が、リスクは高い状況になっている。「そこも相当な矛盾だ。まさに民業圧迫なので、補助金をもらった関係で整備中の一か所を最後に、これから市営住宅の建設は考え直そうと思っている。」
「静岡新聞データベースplus日経テレコン」で「災害+貧困」をキーワードに検索すると、約100件の記事がヒットする。今年9月11日掲載の「仮設から災害公営住宅へ 2,000世帯、入居資格なし−東日本大震災4年半」の中では、生活困窮の実態把握が急務であるという課題を取り上げていた。  公営住宅の位置付けや今後の方針について明言された点については、栗原市長を評価できる。

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