災害による被害と犠牲者
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、地震、津波、原子力発電所事故のトリプル災害により、死者15,889名、行方不明者2,594名、負傷者6,152名、全壊建物127,531棟(平成26年12月10日、警察庁緊急災害警備本部)に及び、広域的かつ長期にわたる影響を引き起こしている。最近では、2014年8月20日(午前3時21分、消防覚知日時)に広島市安佐南区や安佐北区において、166箇所以上で土砂災害が発生し、74名もの犠牲者が出た。
自治体の体制は十分か
東日本大震災では、役所そのものが破壊され機能不全となり、広島の土砂災害では深夜に発生したことにより、24時間体制で市町村が災害対応することの限界が示された。災害により地域が破壊されるという状況に対し、防災の専門職員がほとんどいない市町村が第一次的に災害対応を個別に実施することはもはや合理的ではない。
行政は、大規模災害に備え自治体間の相互応援協定、民間スーパー等と救援物資を確保する協定締結等の取り組みをしているが、抜本的な解決策ではない。
今後も個別の市町村において防災の専門職員を大幅に配置することは期待できず、人口減少と財政状況を踏まえた新たな災害対応の仕組みが必要である。
防災対策は情報収集から
- 広島市の土石流災害(2014年8月20日発生)
行政に依存した防災活動に限界がある一方で、住民や企業は、防災という地域の共同行為にどのようにかかわっていくのか模索を続け、様々な挑戦が実施されるなど、地域における災害に対する危機感や覚悟が問われている。
しかし、他の地域に有益な防災対策であっても、かなり意識的に情報収集しない限り、それを地域間で相互に共有することは難しい。また自らの活動が他の地域の参考になるとは気がつきにくい。そもそも自分の地域のための防災対策であるため、他の地域にも有益になるとの意識で防災対策に取り組んでいることはほとんどない。
情報共有の必要性
各地域の防災活動を相互に共有することは、他の地域の防災活動をそのまま応用できるもの、地域性の違いを考慮して改良しなければならないもの、知識の補完になるもの等、いくつかの段階はあるものの、発想を膨らませる上でのヒントとなり、そこから地域の活動が進展することも期待できる。
そこで本連載では、各地域の防災上の課題や防災活動を紹介することで、地域間で有益な情報を共有し、足りない知識は補完され、眠っているアイデアは引き出され、相乗効果が発揮される情報源になろうと思う。
情報源は、「静岡新聞データベースplus日経テレコン」の他、皆様からお寄せいただいた情報を「防災イレブン」というコーナーで収集したものが中心となる。また、防災担当者へのインタビューなども踏まえ、地域の防災活動や課題を体系的に整理するのが本連載の役割である。
次回は、宮城県石巻市と福島県矢吹町の事例をご紹介し、行政と住民の災害対応の役割について考えたいと思う。