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第2回 住民の防災活動への参画

2015年2月静岡新聞掲載広告から転載

膨大な災害対応への覚悟

静岡県第4次地震被害想定(第一次報告)では、駿河トラフ・南海トラフ沿いで発生する地震・津波において、レベル1の地震・津波の場合、死者数16,000人(うち津波は9,000人)、全壊・焼失棟数26万棟である。これがレベル2の地震・津波の場合、死者数105,000人、全壊・焼失棟数約30万棟となる。
つまりレベル1であっても死者16,000人分の遺体安置所の確保や遺体処理、膨大な負傷者への対応のための医療資源の確保、膨大な避難者に対する避難所運営等の対応、建物26万棟分の建物被害調査から罹災証明書の発行・管理、がれき処理等が求められることを意味する。これらの対応が収束するまでに、どれくらいの人員、期間、予算が必要であり、これをどのような組織体制により運営することが可能なのか。各種の協定という既存の組織体制の拡張で本当に対応できるのだろうか。

行政対応の限界

膨大な災害対応に対し、行政に頼った災害対策へのひずみを示す事例は多い。
東日本大震災時の宮城県石巻市では、避難所運営に関し、2011年3月17日に約50,758人もの避難者が259ヵ所の避難所に入り、石巻市の職員が避難所運営に携わった。概算だと避難所一ヵ所当たり約200人の避難者がおり、職員が対応したことになる。仮に一人の職員が2ヵ所の避難所運営を担当し、3交代制だとすると、約388人の職員を確保しなければならない。津波で水に浸かり、冬の雪が降り、燃料も車両もない状況下でどの程度有効な対応が可能なのだろうか。石巻市の避難所運営は、非常に困難な対応であった。これでは行政職員に避難所運営を期待することは現実的ではなく、地域住民が避難所運営を実施できるようにすることが合理的である。

住民組織による工夫

  • 広島市の土石流災害(2014年8月20日発生)

東日本大震災では、住民の自発的な工夫により効果的な災害対応につながった事例も多い。
福島県矢吹町では、一部損壊以上の住宅は3,165件(住宅全壊290件、住宅半壊1,508件、一部損壊1,657件)あり、これらから発生した家財道具やコンクリートブロックなどのがれきを処理した。このとき、発災直後に自治会内にがれきの仮置き場が設置されたが、家電製品、コンクリートブロック、布団などが無秩序に混在して置かれ、地域住民は効果的な管理方法を模索していた。その中で、同県鏡石町の分別方法を参考に改善した。それは、割れ物はコンテナに置き、布団は雨で濡れると重くなるため屋内に置くなどの工夫であった。これは行政と共に地域住民による自発的な判断と行動がなければ、効果的ながれき処理の運営はできなかった。
これに対し、東京都、神奈川県、静岡県など、首都直下地震、東海・東南海地震が想定されている地域では、住民組織による各種の防災対策が行われている。
神奈川県鎌倉市今泉台地区(住民約5,000人)では、町内会館の防災センターに発電機を備えた無線機本体を設置し、各町内のリーダー約30人に子機(トランシーバー)を装備して、災害状況を迅速かつ正確に把握する体制を取っている。毎月、無線訓練も実施している。

防災活動をデータベースで検索

「静岡新聞データベースplus日経テレコン」においても住民による防災活動が多く紹介されており、大いに参考になる。例えば、「市民トリアージ」。これは膨大な負傷者に対し医療機関だけでは対応が困難な状況を改善するために、住民がトリアージを行い、病院への搬送が必要な患者と応急処置が必要な患者を振り分けるものである。静岡県立総合病院の安田医師を中心に、さまざまな課題を解決すべく静岡市葵区の城北学区などにおいて訓練が継続的に行われている。  「防災訓練」をこの新聞データベースで検索すると約14,000件の記事があった。次回は、現在までの約27年間の変遷に着目しながら住民の役割について考察する。

※トリアージ 負傷者を重症度、緊急度などで分類し、治療や搬送の優先順位を決めること

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