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ホーム>デジタル時代のビジネスと社会>第4回 世界からの遅れが目立つ日本のデジタル化

第4回 世界からの遅れが目立つ日本のデジタル化

2018年10月19日静岡新聞掲載広告から転載

世界63ヵ国中27位

 わが国でもここ最近は、デジタル化への関心が高まっている。しかし実際に日本企業がデジタル化に向けて素早く動けているかどうかと言えば、それは疑問である。驚くべきリサーチ結果がある。世界のトップビジネススクールであるIMDが発表した「デジタル世界戦争力」である(IMD World Digital Competitiveness Ranking2017)。 この調査は世界各国のデジタル化への取り組みを、Knowledge(デジタル化を担う人材、デジタル化に必要なスキルや知識)、Technology(デジタル化の技術インフラ)、Future readiness(変化対応力)という三つの観点から評価している。2017年の調査では、シンガポールが世界ナンバーワンと評価された。KnowledgeとTechnologyに関して世界1位、Future readinessに関しては世界6位という、堂々の1位である。 トップ5にはスウェーデン(2位)、フィンランド(4位)、デンマーク(5位)など、北欧の国が3ヵ国もランクインしていることも注目される。充実した社会保障体制を背景にしたデジタル化に伴う職種転換の促進、小国というサイズを生かした俊敏な対応が、高ランキングの要因だ。それでは日本はどうだろうか。調査対象とされた世界63ヵ国中、27位というのが日本のデジタル化に対する評価である=図表。 GDBが依然として世界3位ということを考えると、この評価はかなり低いと言わざるを得ない。  最近、最新の2018年の調査結果が発表された。日本は5ランクアップして22位となった。



変化対応力の低さが致命的

 日本におけるデジタル化の促進に関して注目すべきことは、Futurereadiness、つまり変化対応に関して極めて低い評価がなされていることである。変化に対する企業の俊敏な対応(Agility of Companies)という調査項目に関していえば、驚くことに日本は世界最下位という評価なのである。 日本のデジタル化対応への評価が2013年の20位からランキングダウンを続け、2017年に27位まで下がってしまったのも、企業がデジタル化に対して機敏に対応できていないためである。2018年にようやくランクアップしたものの、企業の俊敏な対応に関しては依然として世界最下位である。  日本企業のスピードの遅さは、世界的に有名だ。「NEMAWASHI(根回し)」は既に英語かしており、意思決定に時間がかかることで日本企業の悪評は高い。もちろん「NEMAWASHI」によって、利害関係者間のコミュニケーションと利害調整が図れ、実行が徹底されるというメリットもある。 しかし、デジタル化が急速に進む中で、日本企業の従来的な意思決定の仕組みとプロセスは機能不全を来しつつある。2018年、わが国では「忖度」という言葉が流行になった。しかし、ある意味ではそれは日本社会、組織に深く根付いている。 世の中で起きている環境変化に速やかに対応することよりも、トップの移行への配慮が優先されてしまう忖度社会。そのような社会に、デジタル化の未来はないと言っても過言ではない。



GUCCIの変革

 ところで、デジタル化の問題は、ミレニアル世代と呼ばれる、未来の顧客獲得という経営の重要課題とも密接に関連している。ミレニアル世代は、インターネット共に育った世代。 彼らは若い世代がこれからの顧客であり、社員となる。彼らは、デジタル・ネイティブ(生まれつきデジタル世代)であるから、デジタル化しない企業は彼らに見放されてしまう。自分の質問、要望に、わざわざ電話をしないと対応してくれないような企業は、彼らには相手にされない。なぜならば、彼らの主なコミュニケーションは電話でも、電子メールなどでもなく、LINEなどのメッセージだからである。  ファッションブランドの老舗、グッチの顧客の55%は既にミレニアル世代である。それは偶然の産物ではない。2015年にグッチのCEOになったマルコ・ピッザーリ氏の決断した戦略転換の結果である。グッチの新社長としてピッザーリ氏が取り組まなければならなかった最重要経営課題は、グッチのブランド価値の再構築だった。 長い歴史のあるグッチの業績に、当時は勢いが見られなかったからである。そこでグッチ再生の道をミレニアル世代の獲得に見出した。しかしピッザーリをはじめ、グッチの経営陣はミレニアル世代とはほど遠い。そこで、彼は30歳代以下のミレニアル世代を集めて「シャドーコミュニティー」を設け、若手の意見を積極的に経営に反映させた。 一連の変化によってグッチの企業文化は若返り、ミレニアル世代に最も支持されるブランドとして若返った。トップのリーダーシップが、グッチをデジタル時代にも輝くブランドに変革したのである。

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