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ホーム>防災新時代>第6回 首長の防災意識 〜御殿場市編〜

第6回 首長の防災意識  〜御殿場市編〜

2015年6月静岡新聞掲載広告から転載

首長のインタビューの動機

防災は、住民、消防団、ボランティア、企業、行政など多くの担い手の共同行為である。その中で首長は災害対策本部の本部長として、関係者間で状況認識を統一させ、多様な災害対応の舵を取る重要な役割を担う。
しかし、市の政策の重要項目の中には含まれるものの、“わが市の防災を抜本的に改革し、新たな防災政策を立案する!”と掲げて当選した人はほとんどいない。それは地域経済、雇用、医療・福祉、教育など、防災以外に多くの地域課題がある中で、非日常的な防災への意識は相対的に低くなるからである。しかし、防災のことを全く意識していない首長はいない。
そこで私は直接首長にインタビューし、首長の防災意識や危機管理能力を直接知り皆さまにご紹介することで、わが市町の防災政策に注視して頂き、首長の危機管理意識の向上につなげたいと思う。防災活動の第一歩は地域を知ることである。地域の魅力や抱える課題を再確認し、ますます地域を愛する方が増えてほしいと思う。これにより防災活動も進展すると思う。

御殿場市・若林洋平市長に聞く

  • インタビューに応える若林市長

御殿場市の若林洋平市長にインタビューした。若林市長から見た地域が抱える課題、市長の防災意識や危機対応など、広範囲な話題の中からいくつかご紹介する。

限定された経験知であることの理解

当然だが人間は一度経験していれば、二度目は改善し、三度目はもっと良くなる。同様に災害対応も経験知が豊富であればそれだけ良い対応ができる。このとき、防災意識の根底には、個人が保有する経験知が関係する。しかし多くの場合、未経験の災害に対し、高い意識を持ち防災政策を推進することは容易ではない。
若林市長は、前職で病院に勤務されていた。そこは危機管理の塊であり、一歩間違えれば“殺人になり”一歩間違えれば“訴訟”になるという。これらの経験が市長になってからも危機管理上、十分に生かされていることは間違いない。
一方で、これらの経験はある限られたタイミングや状況での経験であることを忘れてはならない。経験を「どのような状況でも繰り返される共通部分」と「状況により異なる固有部分」に分解・蓄積し、次に生かすことが必要である。例えば、2014年2月14日未明から降り続いた大雪では、御殿場市内の中小企業のうち約6割が売り上げ減少などにより、約1億3千万円の損害額が生じた。このときの対応では様々な課題が浮き彫りになった。この点は、「静岡新聞データベースplus日経テレコン」で検索すると、県東部の被害や対応状況が時系列に細かく分かるので、他地域でも今後の参考になる。
多くの課題はあったものの、私は若林市長が被害を抑止・軽減させようと情報収集にあたるなど「災害状況を先取りし、先手の対応」を意識していた点は評価できると思う。

防災と選挙

防災は住民の安全、安心に資する事業であるが、その投資の効果は直ぐに発揮されるものではない。たとえ100年待っていても目に見る効果が出ない場合もあるため首長の成果としては判別し難い。しかも被害の抑止や軽減につながる事業を実施しようと思えば膨大な資金が必要になり、首長の支持を失うこともある。
首長の多くは防災と選挙を関連付けて考えていないと思う。しかし、選挙で防災政策のことを大いに訴え、住民はそれを評価する。その結果、首長は票につながり、住民は安全で安心な環境を手に入れることができる。双方にメリットが発生する状況が必要である。
さて、インタビューで「防災と選挙」について若林市長に伺った。その回答は、「エッ!そんな発想は今言われるまで想像にも思わなかった」と即答された。そもそも自治体が一番やらなければいけない事は、“うわべ”ではなく、住民の安心、安全に資する事業の展開であるという。この他にも、災害時に庁内において統括的立場を持つ危機管理監の設置、防災の出前講座、住宅建設等助成事業など精力的に取り組む姿勢は大いに評価できる。

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