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ホーム>防災新時代>第4回 事前対策による被害の抑止・軽減

第4回 事前対策による被害の抑止・軽減

2015年4月静岡新聞掲載広告から転載

避難者500万人の規模感

南海トラフ巨大地震では、避難所に滞在する避難者は1週間後に最大で約500万人と想定されている。500万人とは、静岡県の人口約370万人の約1.3倍である。この膨大な避難者をいかに効率的に避難所で受け入れ、円滑に避難所を運営するのかが重要な課題の一つである。
南海トラフ沿いで避難所生活を支える物流や人材の確保が必要となり、国や自治体の運営能力が問われる。
同様に、建物についても耐震化率を9割まで向上させたとしても36万棟(地震動が基本ケースの場合)が全壊する。36万棟の応急危険度判定、罹災調査、罹災証明書の発行、建物解体・瓦礫処理が求められ、同時にこの量に相当する仮設住宅やその後の災害公営住宅などの住まいの確保が求められ、これらに対応する能力が必要となる。

事前の被害抑止と軽減対策

この被害量の規模を踏まえると、事前の対策による被害量を削減しない限り長期間の対応、巨額の財政支出が求められるだけではなく、そもそも災害対応にお手上げ状態になる可能性も否定できない。
事前の準備を怠り、全てが事後対応で解決されると発想することは根本的な誤りである。事前の被害抑止・軽減対策が実施された上で(図1−①)、事後の効率的な対応を考えることが不可欠である(図1−②)。これにより、そもそも被害を発生させない状況を作り、我々一人ひとりが被災者にならない努力をすることで、災害対応の負荷を減らし、同時に回復期間が短縮される。

経済的な困窮

もし自分の家が全壊した場合、不自由な避難所生活、仮設住宅への転居、災害公営住宅への移動など生活基盤が転々とし、不安定な状況が続く。
住宅ローンの返済残高があり二重ローンを抱える場合、又は失業して生計が維持できない場合など、経済的に困窮した状況になることも十分に考えられる。しかし、経済的に困窮した状況は、表面上には現れないため、孤独な状態で生活していくことになる。
子どもを持つ人は、もし自分が地震や津波の犠牲者となり、小さい子どもが残された状況やその後の彼らの生活を想像できるだろうか。
厚生労働省によると、東北地方太平洋沖地震で両親のどちらかを亡くした遺児は、岩手、宮城、福島の3県で1,514人。両親を亡くした孤児は241人で、大半は親族と同居しているが、一部の子どもは児童養護施設などの福祉施設に入っている。

事前の防災対策への投資

防災対策に先行投資することで、被害額を大幅に減らすことができる。事前に、どのように避難者を減らせるのか、どうすれば耐震化などの被害抑止が推進されるのかを考え実行することが重要である。
そのためには、安全な場所に住む、倒壊しそうな家屋や構造物は補強する、家族と連絡が取れるように事前に検討するなど、住んでいる家や生活基盤を強固にし、被災者の一人にならない投資をすることである。

マスコミの役割

「静岡新聞データベースplus日経テレコン」で検索すると、「住宅」+「耐震」に関する記事は定期的に発信されている。1995年の兵庫県南部地震以降、耐震化の重要性が報道されている。2001年の芸予地震で全壊建物70棟などの被害が生じ、耐震に関する記事数は増加し、その後は年間100件以上の発信が見られる。
災害は既存の防災モデルを改善する契機になる。他の地域の災害を教訓に、地域の実情に会った防災の在り方を検討し、取り組みを模索していくことができる。そのためにも事前の被害抑止や軽減に貢献するマスメディアの役割は重要である。

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