日経デジタルソリューションセミナー 開催レポート
知の共有と組織力 〜競争を勝ち抜く企業の条件〜
急速なデジタル化に伴い、企業を取り巻く環境が激変している今、”知”の共有や、組織強化は最重要課題の一つとなっている。その中で、社員一人ひとりが得た情報やノウハウをいかにして知識へと昇華し、共有するか。ひいては組織の成長や強化につなげていくか。
今回は、一橋大学大学院やスイスのIMDで知識創造やイノベーションを研究する一條和生教授と、株式会社インテグレートにて様々なヒット商品を仕掛けてきた藤田康人氏を迎え、具体的な事例やプロジェクトを交えながら、競争を勝ち抜く条件について語ってもらった。その一部をレポートとしてご紹介する。
基調講演 「イノベーションと知的創造経営」
一條 和生氏(一橋大学国際企業戦略研究科長、教授)
最初に基調講演「イノベーションと知的創造経営」に登壇したのは、一橋大学大学院の国際企業戦略研究科にて科長を務める傍ら、スイスに拠点を置く世界的なビジネススクール IMDでも教鞭をとる一條和生教授。知識創造理論やリーダーシップを専門とし、昨年(2015年)は『リーダーシップの哲学』を執筆した一條氏が、今、世界の経営者が何を課題視し、取り組んでいるのか、最先端の事例を交えつつ講演を行った。
世界有数の経営者が重要視する課題、『デジタル・ディスラプション』とは?
「世界の経営者がもっとも注力しなければいけないと考えている経営課題、それが『デジタル・ディスラプション(デジタルによる経営破壊)』である」。デジタルテクノロジーを駆使し、新しい企業あるいは新しい仕事の仕方やビジネスプロセスを構築することができなければ、会社が破壊されてしまうというのが、『デジタル・ディスラプション』である。
「知識を共有する。それが競争優位に繋がっていく」と話した上で、一條氏は『デジタル・ディスラプション』でどんなことが起こるのか、それがもたらす影響にも言及しつつ、乗り越えていくための方法やマインドについて触れた。
印象的だったのは、日本を代表するSPA企業の事例。オープンイノベーション(異業界の企業と連携し、革新をはかる)を積極的に進め、世の中に次々と新しい商品を送り出している。背景には『デジタル・ディスラプション』に強い危機感を抱いている経営者の存在があるという。
知識創造において、一番重要なものは?
『デジタル・ディスラプション』という経営課題を乗り越えつつ、企業がデジタル化に成功していくためにはどうするべきか。特に印象的だったのが、一條氏が紹介したシスコシステムズの元CEOであるジョン・チェンバースの言葉。「10年後には現在の企業の40%が姿を消す。ゆえにデジタル化は急務だ」といったコメントを挙げつつ、大半の企業が”人材不足”を理由になかなか進められていない現状について言及した。
最後に自身が専門とする「知識創造理論」の仕組みや重要性にも触れつつ、「デジタル化が急速に進むこの時代に、知識創造を行うにあたって一番重要なのは”belief(信念)”だ」と話した一條氏。「デジタルテクノロジーを実施するにしても、我々には経験がない。では何を基準にしていくのか?それは普遍的な価値観につなげて判断していくしかない。常に本質的であるか?大義はあるのか?といったことを考えていかなければならない」と語った。
なお、一條氏のスライドに関しては、下記よりダイジェスト版をダウンロードすることができるので、ぜひそちらも併せてご覧いただきたい。
一條 和生氏の講演資料のダイジェスト版ダウンロードはこちら
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特別講演 「広報・PRで作る売れ続ける仕組み」
藤田 康人氏(株式会社インテグレート 代表取締役CEO)
続いて登壇したのが、株式会社インテグレートで様々なブームやヒット商品を仕掛けてきた代表の藤田康人氏。キシリトールの仕掛け人でもある藤田氏より、実際のプロジェクトや事例も交えつつ「広報・PRで作る売れ続ける仕組み」について語ってもらった。
インターネットがもたらした、テレビCM中心のマーケティングの終焉
「マーケティングとは、一言で言うならば売れ続ける仕組みのこと。キャンペーンをしたり、面白い広告を打てば一瞬は商品が売れるかもしれない。しかし、売れ続けるにはPDCAを回す仕組み、あるいはPDCAを回すのに最適なプラットフォームを持っていることが重要だ」とはじめにマーケティングの定義について説明した藤田氏。
さらにインターネットやスマートフォンの急速な普及、つまりデジタル化によって、広告をドカンと打てば必ず売れるという保証はなくなり、マーケティングの世界は激変したという。
続いて藤田氏は、昨今のメディア事情について最近の調査結果に触れた。消費者とメディアの接触時間において、インターネットがテレビを上回る結果が出たという。ペイドメディア(広告枠として買われるマス/オンラインメディア)、アーンドメディア(第三者情報として得られるメディア、例:SNS、テレビ番組、記事など)、オウンドメディア(自社サイト、カタログなど)の3種類のメディアについて説明し、
中でも企業によるコントロールが難しいアーンドメディアの活用が重要になると言及した。
加えて「情報のボリュームではなく、情報の質やタイプが大事。消費者の情報バリアを解く上で、マーケティングにストーリーが求められる時代になった」と語り、ある食品メーカーとのプロジェクトを事例に挙げた。
答えは顧客の中にある。いかにして”黄金文脈”を見つけるか。
これからのマーケティングについても触れた藤田氏。単純な認知の拡大ではなく、認知から購買までいかにして商品やサービスを理解してもらい、消費者の態度を変え、買いたいと思ってもらうか。マーケティング戦略を設計する上で、インサイトの発見がカギになるという。一方でインサイトの発見が容易でないことに触れつつ、有効な手段としてカスタマージャーニーを挙げ、「顧客の購買プロセスを明らかにすること。
ターゲットがいかにしてカスタマーあるいはファンになったか、パーセプション・チェンジ(意識や認識の変化)のポイントを探りつつ、顧客に密着してインサイトをつかむことが重要だ。そして購買のきっかけ・決め手となった体験、すなわち”黄金文脈”を発見することが成功へのカギとなる」と説明した。
また、インサイトは購入した人だけに限らず、購入しなかった人のインサイトも知ること、さらにその周辺に存在するステークホルダー、例えばメディアや有識者、流通それぞれのインサイトを明らかにしていく必要もあると述べた。
黄金文脈を、消費者を動かすストーリーへいかに昇華させていくか
次にこれまでの代表的な手法の一つであるクロスメディア・マーケティングと、今、注目を集めつつある統合型マーケティングの違いについて解説しつつ、「重要なのはインサイトから導き出したテーマやストーリーは統一しつつも、消費者と企業の接点に関してはそれぞれのインサイトを考慮して最適なメッセージを届ければいい。 これまでのクロスメディア・マーケティングのように必ずしも一つのメッセージや表現にこだわる必要はない」と語った。消費者の態度変容に向けて、ターゲットのインサイト分析や報道分析を行うには、日経テレコンをはじめとした情報データベースの活用が欠かせないという。 社会やメディアのトレンド、世の中のオープンデータを把握し、既存情報を整理しつつ、新しい可能性を探る。仮説を立てては検証し…また仮説を立てて検証する、この繰り返しを経ていかにきちんとしたストーリーを作れるか。最後に「これからの統合型マーケティングを成功に導くには、きちんとしたストーリーづくりが必須である」という言葉で講演を締めくくった。
プレゼンテーション『日経スマートクリップ』のご紹介
日本経済新聞社デジタルメディア局
組織間、メンバー間の情報共有をスムーズにし、企業や組織の強化、事業のサポートに貢献する日本経済新聞社のサービス「日経スマートクリップ」について、その活用方法やポイントをデジタルメディア局の松吉が紹介しました。詳しくは下記のスライドからご覧ください。
日経スマートクリップのより詳しい情報はこちら
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