静岡新聞+日経テレコン

  • ホーム
  • サービス紹介
  • 活用シーン
  • 導入事例
  • 活用術
  • 防災新時代
  • デジタル時代のビジネスと社会
  • 料金プラン
  • 静岡新聞plus日経スマートクリップ
  • 静岡新聞plus日経人事ウオッチ Pro

ホーム>デジタル時代のビジネスと社会>第7回 「未だ創業初日」(その1)

第7回 「未だ創業初日」(その1) height=

2019年11月静岡新聞掲載広告から転載

「創業の理念」が企業に成長をもたらす

 世界の経営者が毎年、注目している文書がある。それはアマゾンのジェフ・ベゾスが書く「投資家への手紙」である。2017年の「投資家への手紙」は次のように始まっていた。
  「ジェフ、創業2日目ってどんな感じなのですか?」
 これは最近、開かれた全社員集会で私が受けた質問です。何十年間も、私は皆さんに、今日が創業初日(it?s Day 1)だと言い続けてきました。私が仕事をするオフィスが入っているビルの名前は「創業初日」(Day 1)です。
https://blog.aboutamazon.com/company-news/2016-letter-to-shareholders

 Eコマースの覇者、さらに今はAWS(Amazon Web Services)でクラウドの世界でも世界をリードするアマゾン。そのアマゾンで創業者ジェフ・ベゾスが社員に繰り返し言い続けているのは「今日は未だ創業初日」(It remains Day 1)ということである。
またベゾス自身も自分にそれを言い続けている。何しろ彼のオフィスは「創業初日」と名付けられたビルに入っており、彼はシアトルの本社にいる限り、「創業初日」の気持ちを新たにしているのである。 ベゾスの「創業初日」へのこだわりは徹底していて、の投資家への手紙は毎年、「今日はまだ創業初日」という同じ言葉で締めくくられている。

ジェフ・ベゾスAmazon.com CEO

 また、アマゾンがNASDAQに上場された1997年の「投資家への手紙」も毎年添付されている。それは、創業初日に持っていた自分の信念を、常に持ち続けるというベゾスの強い信念を示すものだった。1997年の投資家への手紙には、次のように記されていたのである。「今日がインターネットの、そして我々がうまくやれれば、アマゾン・ドット・コムの創業初日です」。 創業初日のベゾスの信念として強調されていたのは、長期的展望、顧客への執着(Customer Obsession)だった。そしてそれは、今もまったく変わっていない。ベゾスの毎年の投資家への手紙を読んで強く心に残るのは、メッセージの首尾一貫性だ。「今日はまだ創業初日」とベゾスが言い続けるのも、その信念に基づいてアマゾンを経営するためだった。2016年の「投資家への手紙」には次のように記されている。「創業初日であり続けるためには、忍耐強く実験を行わないといけないし、失敗も受け入れないといけない。事業の種まきも行い、苗木を守らないといけない。そして顧客の喜んでいる姿を目にすれば、喜びは倍増する」。
 1997年のアマゾンの上場時の株価は18ドル、売り上げは1億4,780万ドル。1994年7月の創業から25年経過した2019年にアマゾンの株価は1,839ドルを超え(2019年9月13日)、時価総額も9,500億ドルに達している。売り上げ2,329億ドル、社員数64万7,500人(2018年)の堂々たる大企業である。だからこそ、ベゾスは創業初日、つまりスタートアップの気持ちを持ち続けることが大切だと考えるのである。さもなければ、スピードの遅い、保守的な会社になってしまう。そして実際に、アマゾンはスタートアップのように新しいことに挑戦し続けているのである。社員65万の規模になっても、スタートアップ企業のように挑戦を続けられるのも、アマゾンの社員が「今日はまだ創業初日」という言葉で一体となっているからである。また、顧客への執着を社員が持ち続けられるのも同じ理由による。なぜ創業初日が大事なのか。それは、社員全員が顧客のことを考えるようになるからである。65万人のアマゾン社員の内、顧客に直接接していない人のほうが圧倒的に多い。だから、「今日が創業初日」と社員全員が思うことで、顧客への執着を社員全員が一丸となって行うようになるのである。

Day Oneに回帰したソニー

 アマゾンと同じように、Day Oneの意義を再認識したのがソニーだ。ソニーは「ソニーショック」と呼ばれた存亡の危機を克服し、2018年3月期には最高益を10年ぶりに達成するほどに復活した。2019年5月末に開催された経営戦略説明会で演壇に立った吉田憲一郎社長の背景には、腕相撲をする創業者(ファウンダー)、井深大と盛田昭夫の有名な写真が映されていた。原点の再認識というメッセージがそこには込められていた。
 転機は4年前にあった。2015年にソニーは第2次中期経営計画の発表に備えて全世界のグループ会社の経営幹部が集うミーティングのテーマを「原点へのチャレンジ」とした。その時の議論の一部が2017年の経営方針説明会で披露された。 「外部環境の変化に対応するため、また、競争に勝ち続けて行くために、変えるべきものは勇気を持って変えていく。一方で、ソニーがソニーであり続けるために決して忘れてはならないことが創業の理念であり、今一度創業者が記した設立趣意書に立ち返る必要があると考えたからです。」と当時の発表資料には記されていた。
 ソニー復活の原因は、Day Oneの上に、未来に向けて存在意義の発揮を目指したことにある。https://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/library/presen/strategy/2017/speech_J.pdf

pagetop

S