【いま、広報の基本を考える】第1回/全5回
広報が熱く語るほど、
メディアは冷めていく?
現場ライターが明かす、
プレスリリースが無視される、
本当の理由

Column

【いま、広報の基本を考える】第1回 広報が熱く語るほど、メディアは冷めていく? 現場ライターが明かす、プレスリリースが無視される本当の理由

2026年3月 読了時間:3分

企業を取り巻く情報環境が大きく変化するなかで、広報に求められる役割も高度化しています。発信手段は多様化し、情報の拡散速度は増し、広報はこれまで以上に戦略的な判断を求められる存在となりました。

だからこそ、あらためて立ち返りたいのが「基本」です。
派手な手法や最新トレンドに目を奪われがちな時代だからこそ、広報という仕事の土台にある考え方や姿勢を見つめ直すことには、確かな意味があるのではないでしょうか。

本連載「いま、広報の基本を考える」では、メディアや現場の視点を交えながら、広報という仕事の原点をあらためて捉え直します。第1回は、現場で取材・執筆を行ってきたメディアライターの視点から、プレスリリースが記事化されるかどうかを分ける判断軸をたどり、広報発信の基本を整理します。

相川いずみ

ビジネス誌やPC/IT誌、官公庁広報から企業のオウンドメディアまで幅広く執筆するメディアライター兼、編集者。数多の取材現場で広報担当者と対峙した経験を持つ。広報とメディアの間に横たわる視点のズレを埋めるべく、双方の視点に立った執筆を心がけている。

「もっと自社のビジョンを知ってほしい」
「この新製品のスペックは画期的です!」

広報担当者が熱く説明する一方で、聞き手となるメディア側は、その情報が記事として成立するかどうかを静かに見極めています。
どれほど素晴らしい理念や新製品であっても、プレスリリースが読まれないまま埋もれてしまうことは珍しくありません。
それはなぜでしょうか。
メディアが求めているのは、その情報が読者の貴重な時間を割いてもらうだけの価値があるのかという、極めてシンプルな基準だからです。

筆者はこれまで、PC/IT誌から官公庁広報、企業のオウンドメディアまで、数多くの媒体で執筆し、何百人もの広報担当者と接してきました。その経験から言えるのは、メディアが「もっと話を聞きたい」と思う広報と、そうでない広報には、決定的な視点の違いがあるということです。

本記事では、教科書的な広報論は語りません。現場のライターが内心抱いている「それ、読者には関係ないですよね?」という本音と、本当に記事になるためのアプローチについて、包み隠さずお話しします。


そのプレスリリース、0.5秒でスルーされていませんか?

毎日、編集部やライターのもとには、大量のプレスリリースが届きます。
受動的にも能動的にも情報が溢れかえるなかで、編集部やライターがすべてを熟読することは物理的に不可能です。

そのため、残念ながらタイトルだけを流し見て、読まれないまま忘れ去られてしまう情報も数多くあります。メディア側ではこれらの情報を機械的に選別しています。

私の場合は、件名を見て読むか読まないかを瞬時に決めています。その判断にかかる時間はおよそ0.5秒。

より良い記事を作るためには、もちろん多くの情報を知っておくことは大切です。
しかし、時間には限りがありメディアとしてはできるだけ新鮮な情報を届ける必要があります。ライターにとって、読者のメリットにならない情報を読む時間はありません。

せっかく苦労して作成したプレスリリースを、メールで一斉送信しても、メディアからなんの反応も返ってこない……。そんな経験を持つ方も少なくないでしょう。その裏では、メディア側もやむなく選別をしているという事実があります。

「未読スルー」されるリリースの共通点

このように、未読スルーされるプレスリリースと、思わずクリックして取材したいと思わせるリリースの違いはどこにあるのでしょうか。
以下は、残念ながら、明らかにミスマッチしているリリースの特徴です。

1.広告記事を連想させる内容

編集部やライターは、「広告記事を売り込みたいのか、そうでないか」に敏感です。
「これは面白そうではあるが、企業の広告になりそう……」という匂いのするプレスリリースは避けがちです。メディアとしては、記事はメディア側の視点があって初めて成り立つものなので、企業側から用意された企画は編集記事とは呼べないからです。

もし、メディア側との会話で、「広告記事なら可能かもしれませんが……」という言葉が出た場合は要注意です。それは、お金を払っていただければ掲載できますが、ニュースとしての価値はありません。つまり、編集記事にするのは無理であるという婉曲なお断りのサインです。

2.メディアとの親和性が低い

こちらに関しては、持ち込みをされてもメディア側としては、趣旨が違うとお断りせざるを得ないケースです。せっかくのご提案に、にべもなく断るのも心苦しく、ついお話をうかがってしまうこともあります。しかし、掲載という出口が見えないまま時間だけが過ぎるのは、お互いにとって一番不幸なことです。

今日からできる「読まれるプレスリリース」への第一歩

では、どうすれば、メディアの興味を引き「もっと知りたい!」と思わせることができるのでしょうか。

よく言われる「主語を企業から社会へ変えよう」といったアドバイスですが、そんなことは広報の皆様も百も承知でしょう。

メディア側は、記事として成立するかどうかでプレスリリースをチェックしています。理想を言えば、メディアごとに専用のリリースを作ることですが、これは現実的ではないかもしれません。しかし、簡単なチェックを行うことは可能です。

それは、自分自身が、そのメディアの最もシビアな読者になりきることです。

具体的な方法を紹介しましょう。
まず、アプローチしたいメディアのPVランキング(よく読まれている記事)を確認します。そこには、そのメディアの読者が何を求めているかの正解が並んでいます。

そのランキング記事の中に、あなたが書いたリリースを並べてみてください。もし、そこで浮いていたり、明らかに広告っぽいと感じたりしたら、そのリリースは未読のまま忘れ去られていく可能性が高いでしょう。

逆に、ランキング上位の記事と同じような熱量や切り口で、これは面白そう(読めば、自分に得がありそう)と感じられる内容になっているとよいでしょう。このフィルターを通すだけで、メディアが選別する際に「あれ、これは記事化できるかも?」と手を止めて読まれるプレスリリースへ近づいていきます。

広報担当者ではなく、プレスリリースを選別する側の編集部やライターの目で、自分のプレスリリースを検討する。今日から実践できる方法ですのでぜひお試しください。

メディアもまた、常に書くべき最高の一本を求めています。そんな編集者やメディアライターの意欲をかきたてる、熱いプレスリリースに出会えることを楽しみにしています。